写真と個人小史

カメラマンになりたかった。
理由は覚えていない。
まだ幼稚園児だったような気がする。

母親に言ったら
「じゃあ、女の人のハダカも撮らなあかんでぇ」と言われた。
初めての夢はあっけなく蹂躙された。酷に過ぎるぞ。

さておき、俺はいままで自分のカメラというものを所有したことがない。
修学旅行のときも、合宿のときも、インスタントカメラすら持っていかない。
ケータイのカメラ機能はあまりに粗末だから使わない。
本当に俺はカメラマンになりたかったんだろうか。

カメラマンに一番近づいたとしたら、中学に入ったころ。
ポケットが6個ついたカーキ色のベストはマイフェイバリットアイテムだった。
母親の買ってきたフランネルシャツとのコーディネイトは抜群で、まだ小学生の弟に見せびらかしたりもした。
今、俺がアルマーニのスーツとマーク・ジェイコブスのネクタイで着飾っても消去できない現実である。
まぁ、中学生のオシャレ感覚なんて誰しもそんなもんだろう。

当時の俺といえば、凡庸をまさしく体現していた。
勉強は可も無く、不可もなく。
体育は苦手だったが、部活の練習は毎日あったので、バレーボールで標的にされるほどでもない。
クラスの中心的人物とのかかわりといえば、宿題のプリントを見せるぐらい。
つまりは、よくいる「どうでもいいヤツ」だ。
なので、卒業アルバムには集合写真以外、二枚しか写らなかった。
うち一枚は教室の隅で文庫本を読んでいるだけ。
しかも、その本がよりによって「斜陽」だったりする。お前が死んでしまえ。

高校で勉強は多少できるようになったが、別段差異は見られない。

大学に入った。
そのときは意識しなかったが、きっと俺みたいなやつを大学デビューというのだ。
ともあれ、サークルには歓迎されることに成功した。
へヴィメタルを聴いていて良かったと心底思ったのは後にも先にもあのときだけだ。

亀「君の好きなバンドを3つ言ってくれ」

俺「メタリカ、スレイヤー、モーターヘッドです」

亀「完璧だけど、アンスラックスは?」

俺「S.O.D.のほうが好みです」

亀「素晴らしすぎる」

1ヶ月ほどすると、ライブハウスのステージに立つことになった。
実は高校のころ、一度だけライブをやったことがある。
別の学校の知り合いとUKのコピーバンドをしばらくやっていたのだ。
いざ、本番というのにシールドケーブルをわすれ、仕方なく友人に借りたそれは1.5mしかなく、俺はベースアンプの真横から微動だにせず、演奏を続ける羽目になった。

話がそれた。

新歓期のセッションなのだが、ステージ上の自分を写真におさめられるという経験は初めてだった。
きっと、演奏に一生懸命だったのだろう。
出来上がった写真の中の俺はかわいそうなぐらいキョドっていた。
間違いなく、あるドラマーの先輩がCreeping Deathを容赦ないテンポで叩いたせいだ。
ダウンピッキングファシズムに屈しつつ、自らメタラーであるがゆえの固陋な精神を呪った。

最近ではそこまでステージでガチガチになるということも無くなりつつある。
写真でも、ある程度リラックスしているように見える。
しかし、最近の集合写真では明らかに疎外されている気がする。

今日の飲み会で先輩に
「お前はいい位置を見つけたよ」と言われた。

中学のころも、いまも写真の中の俺がギリギリ判別可能なサイズであることは変わりない。
[PR]
by sargent_d | 2005-02-01 04:43
<< 容貌は峭刻となり・・・ コーヒーと道徳 >>