学校(22号館)のPCから。
なにやら、うちの学校はオープンキャンパスらしい。 制服姿の女子高生やら、どう見たってオッサンとか、ママンと一緒のキモイやつとか、とりあえず受験生で一杯になっている。各所で模擬講義やら説明会やら。模擬講義なんか受けてもなぁ・・・と思う。実際、大学に入ったらほとんどがおじいちゃんの子守唄なわけであるから、参考にならないはず。 それでも、受験生たちの両目は炯炯爛々としていて、ああ、情熱くさいと思わずにいられない。 文カフェで缶コーヒーをすすりながら眠たげな目で喫煙している俺を彼らは侮蔑の目で嘗め回しているようだ。 しかし、文学部も商学部の忙しいのはわかるが、なにもPC教室を閉めないでほしい。おかげで22号館くんだりまで汗をたらしたらしやってきたら、超満員で席につくまでに小説が50ページも進んだ。アホくさい。俺のスカポンタンなPCが恨めしい。 みんな、何を思って早稲田という大学を目指すんだろう。 俺の場合はオープンキャンパスに行かなかった。 高2の夏休み、なんでもない日に来た。 こっちにすむ親戚は牛込柳町に住んでいるので、そこに泊まらせてもらった。 もう70歳ちかくだが、政経のOBだ。その親戚に案内されて、早稲田と慶応のキャンパスを見学した。正直、このときは早稲田でも慶応でも、入れるのならどちらでも良かったのだ。というか、この時期はとくに勉強もしていなかったので、モチベーションにでもなれば、ぐらいの気持ちだった。理系はてんでダメだったが、国語と英語は勉強しなくてもできたもんで、親には申し訳ないが、私学文系ということだけ決めていたのだ。 先に慶応の三田キャンパスに向かった。 建物は想像していたのとは違ってボロかった。慶応というと、やはり金持ちのイメージが強いので、下手すりゃロココ調の建物だったり、なんて馬鹿なことを考えていたもんだ。実際はコンクリ、漆喰むきだしのなんてことない建物。まぁ、風格はあったが。 キャンパスには当然、人は少なかったが、テニスバッグを担いだ人や、キャッチボールをしている人がいた。そこで気づいてしまった。みんな服装が上品で清潔なのだ。今でもはっきりと覚えている。キャッチボールの二人は鶯色のポロシャツと群青色の半袖ボタンダウンシャツだった。見るからに育ちがよく、メタルフレームのめがねが汗と一緒にキラリ☆としていた。 ああ、絶対無理。と、思った。 そのときの俺の格好は、よれよれになったブラックサバスのTシャツ(もう着られなくなった)と、色の落ちまくったリーヴァイスに、薄汚れたvansのスリッポンだったのだ。こんな夢と幻想のハートフルストーリーにはついていけない。 そのまま早稲田に向かった。西早稲田キャンパス、通称本キャン。 革マルが行進演説をしていた・・・・・・。 誰もいないキャンパスに、ハンドスピーカーの割れた音がこだまし、赤い旗が悠々と振られていた。あれは練習だったのか、本気だったのか今でも判らない。けれど、そいつらの格好は、全員俺よりも汚かった。ここしかない、本気でそのときは思ってしまった。阿呆だ。 早稲田に来ればブランド力が得られるだろう、と思っている受験生は正解だ。 生活していて、よく実感する。 職務質問されたとき、学生証を出せば、それで一発OKだ。それ以上に追求されたことがない。 実家に帰れば、近所のおばちゃんが、「あなた早稲田に行ったんやってねぇ、頭よさそうやと思ってたわぁ」だなんて、うれしくもなんともない空疎なお世辞をくれる。 そういったとき、ああ、俺は早稲田っていう見えない服を着た裸の王様になりかけてるな、って実感する。 ドラゴン桜という漫画が、ドラマ化されて、人気も出ている。 「馬鹿とブスほど東大に行け!」と主人公は叫ぶ。 まったくだ。どんだけ馬鹿でも、ブスでも東大に行けば社会に認められる。 けど、自己価値が上がるのではない、他者を介した社会的な価値が上がるのだ。 そこで自己価値が上がったと勘違いしてしまうと、まさしく裸の王様なのだ。 俺はこのドラマの主張を強く支持する。 受験という制度で勝ち抜きさえすれば、競争は圧倒的に有利になってしまう。 幸か不幸かそれは現実だ。 いくら学歴社会が崩壊したとわめこうが、そんなものは嘘だ。 たいていの幸運を掴むやつはそのまえに学歴を掴んでいる。 幸運の掴み方をおぼろげにでも知っている人間は、学歴というものの有用性を理解しているんだと思う。だって、学歴は判りやすい。ある一定レベルの問題を解けるということの証明だから。学歴なんかでは何も判らないなんていうのは真っ赤な嘘だ。 けど、早稲田という学歴社会の枢軸の中にいていつも思う。 学歴って、しょうもないな、と。 それは有用性とか現実性とか、そういった次元の問題ではない。 つまらん、のだ。そして、とても虚しい。 それを手にしてしまい、しかもこれから多少なりとも利用してしまうであろう、俺が言うのもおかしいが、そう思っている。 大勢の来るべき新入生を見ながらそう思った。 しかし、課題が終わらないな・・・・・・。
by sargent_d
| 2005-07-30 16:58
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